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著者の堀内圭輔先生とは整形外科の臨床における専門領域を共有していることから,以前より親交を深めていただいている。同時に基礎生物学の研究にも従事されていることから,私が編集委員を務めている学術誌に投稿された論文の査読をしばしばご依頼申し上げている。大きな声では言えないが,査読者のreviewの質は,いわゆるピンキリである。その中で著者のreviewは,内容を十分理解した上で,研究の目的は論理的なものであるのか,実験計画に見落としがないのか,結果の解釈は妥当であるのか,そして結論は結果から推定されるものなのかという点について,毎回極めて適切なコメントをいただいている。たとえ最終的な意見がrejectであっても,投稿者にとって有用なアドバイスとなるコメントをcomfortable Englishで提示され,いつも敬服していた。本書を一読して,なるほど論文を書くということに対して,このような確固たる姿勢を持っておられるから,あのようなreview commentが書けるのだと納得した次第である。
著者が述べているように,学術論文とは情報を他者と共有するためのツールである。SNSを介しての情報共有と異なる点は,情報の質,信頼性に関して,複数の専門家が内容を吟味した上で公開されることである。そして公開された情報に基づいてさらに深く,あるいは広く研究が行われ,その成果が再び学術論文として公開されていく。つまり学術論文を書くということは,小さな歩みであるかもしれないが,科学の進歩に貢献するということであり,自分の発見したことを,わくわくする気持ちで文章にするということである(私の大学院生時代のボスは,Nature誌に単独著者でI foundで始まる論文を書かれていた!)。
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