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はじめに
色覚異常はとっつきにくい学問分野であること,それと臨床医学として治療の対象にならないことから,学生に魅力のない分野として嫌われてきた感があります.しかし色覚異常は,ことに網膜内の光情報の処理系を解明するうえで有用な欠落疾患として眼生理学上貴重な位置を占めており,世界中で関心をもたれている学問分野です.それとは別に,色覚異常のほとんどが男性で,女性は垣の外におかれています.そういうわけで,今回は女性と色覚異常と題して,学生さんを対象に私の最終講義をすることにしました.
イントロダクションとして,色盲表と名大眼科学教室の係わりに触れてみることにします.私の3代前の教授であられた小口忠太先生は小口病で世界的に有名なかたですが,1910年に陸軍の衛生材料廠から色神検査表の第一版を出し,同じ年に"Stillingの原理による仮性同色表"と副題をつけた色盲表を出版しておられます(同じころ石原忍先生が大正15年式色神検査表の名でかの有名な石原表を陸軍省の徴兵検査用として出しています).小口表は今日では全く使われていませんが,いま見てみると大変ユニークな点をもっていることがわかります.第1表に青黄異常用の表があります.この表で十分な青黄異常の検出はできませんが,既に青黄色盲に関心が払われていたことに意味があります.次の特徴は小口先生の創語による迷行表というもので,線を辿ってゆく表です.迷行表の優秀さはのちの大熊氏色盲色弱度検査表をみればわかります。第3の特徴はランドルト環様のリングの切れ目を仮性同色様に読みとる表をもっていることです(図1)。最新の石原(大熊)表にはこの方式が採用されております。カード式色神検査表が付いているのも特徴のひとつです。
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