臨床實驗
抗生物質の抗菌力とpHとの關係の研究
花房 淳
1
1熊大眼科
pp.329-334
発行日 1953年7月15日
Published Date 1953/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201540
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種々の抗生物質の發見以來,傳染性疾患の治療法として,これらの抗生物質は驚くべき治療效果をおさめている眼科領域に於いてもこれらの抗生物質は在來の藥品にとつてかわつて,日々の診療に缺くべからざるものとなつている。眼科領域に於いては,これらの抗生物質は經口投與,筋肉内注射,靜脈内注射或は結膜下注射等としても使用されるが,主として軟膏或は溶液としての點眼が用いられている。併し保存性,刺戟性或は安定度等の問題によつて,これらのいろいろの抗生物質を溶液とした場合にはそのpHはまちまちである。ところで他方,溶媒のpHの變化によつて抗生物質の有する抗菌力にも影響を及ぼすであろうと云うことは當然考えられる問題である。
ところがこの抗生物質の抗菌力とpHとの關係についての詳細な文献は甚だ少ない。萩原・尾島はオーレオマイシン鹽酸鹽の抗菌力に對するpH及び濃度の影響をカツプ法を以て検べている1)2)。そして,オーレオマイシンの水溶液のpHを6.4とすれば他の値の場合より僅かながら效果がよくなり,又このオーレオマイシンの水溶液の抗菌力は0.001%から0.01%までは效力が濃度と共に著明に増加するが,それ以上の濃度になると效力の増強は緩慢になると述べている。又,柴田は寒天平板穿孔法によつて0.2%フラシンのpHによる抗菌價の變化を追及し,pH値が5.0〜8.0の間に於いて抗菌性が大であり,それ以上及びそれ以下に於いては感少を示すと述べている3)。
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