今月の臨床 腹腔鏡下手術—知っておくべき最新情報
手技の工夫,注意点
1.吊り上げ法
井坂 恵一
1
1東京医科大学産婦人科
pp.257-261
発行日 2001年3月10日
Published Date 2001/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904276
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
腹腔鏡を用いた手術を行う際には,当然のことながら手術を行う視野を確保することが必須条件である.このために従来より気体(ガス)を腹腔内に注入して術野を得る気腹操作が用いられてきた.当初は空気や窒素など種々のガスが使用されたが,現在では起爆性や吸収性などの安全面に関してより優れた炭酸ガスが使用されている.しかしながら,腹腔内のガス圧上昇や炭酸ガス吸収に起因する重篤な合併症に遭遇する可能性は依然として残されている.腹壁吊り上げ法は,このような気腹による合併症を回避することを目的として考案された方法である.
当教室では,1993年に初めて腹腔鏡下手術に吊り上げ法を導入したが,その後独自の吊り上げ方式1,2)を考案し現在に至っている.この方法は,気腹の代わりに腹壁を挙上することによって安定した術野を確保し,気腹による合併症を回避する方法であるが,手術器具の操作性やディスポーザブル製品の削減による経済性の面でも大きな利点が得られることが明らかとなった3).われわれは現在までに本法を用いて約1,000例の腹腔鏡下手術を行っており,その手技もほぼ完成したように思われる.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.