特集 腫瘍マーカー
Overview
腫瘍マーカー—とくに癌胎児抗原の展望の面から
竹内 正七
1
,
高橋 完明
1
Shoshichi Takeuchi
1
,
Hiroaki Takahashi
1
1新潟大学医学部産科婦人科学教室
pp.15-18
発行日 1988年1月10日
Published Date 1988/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207712
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腫瘍マーカーとは悪性腫瘍によって特異的に産生される物質で,正常ないし良性疾患の際にはほとんど産生されないものをいい,これを検出,測定することにより腫瘍の病態を把握するために有用なものといえる。この中で腫瘍にしか存在しない物質を腫瘍特異物質または抗原(tumor-specific substance or antigen)とよぶが,現在用いられている腫瘍マーカーのほとんどは腫瘍関連物質(tumor-associated substance)であり,正常では極少量しか存在しないのに悪性では異常に高い値を示すものをいう。したがって癌胎児抗原のみならず多くのものが腫瘍マーカーとして取り扱われている。
腫瘍マーカーの分類としてはWaldmanとHerbermanの分類1)が有名であるが,筆者はもっと理解しやすい分類2)を試みた(表1)。腫瘍マーカーを血中,尿中,腟液などに分泌される体液マーカーと,酵素抗体法などにより組織切片上で検出される癌組織マーカーに大別した。腫瘍マーカーとしての癌胎児抗原が注目されてきた理由としては,分子生物学の進歩によりオンコジンの研究が進み,癌化機構の解明に進展があったこと,LDH iso-zymeをはじめとする等電点電気泳動法や,ポリクローナル抗体,モノクローナル抗体を用いた抗体による検出法の確立など測定法の進歩があったことがあげられる。特に近年,モノクローナル抗体の作成,遺伝子工学などのテクノロジーの進歩は目をみはるばかりで,第39回日本産科婦人科学会学術講演会では「婦人科領域における癌・胎児抗原の基礎と臨床」がシンポジウム3)に,「腫瘍マーカー」が教育講演に取り上げられた。
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