ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 更年期障害
Topics
更年期精神障害の今日的特徴
北村 陽英
1
Akihide Kitamura
1
1大阪大学医学部精神医学教室
pp.191-193
発行日 1985年3月10日
Published Date 1985/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207144
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旧来の精神医学においては更年期(閉経の頃)と,それ以後の老年期に入るまでの期間すなわち退行期を区別し,退行期を初老期と呼んでいた。しかし,これらの各時期がどの年齢層に相応するかを厳密に定義することは今日ではあまり意味を持たなくなった。その理由は,更年期の精神疾患を究明するにあたり,以前は身体変化(生物学的側面)に重点がおかれていたが,近年は個人の生活史上の出来事や精神面の変化(非生物学的側面)が重視されるようになったからである6)。閉経の平均年齢は48.9歳といわれているから1),この時期頃が更年期ということになる。すなわち,中年期から老年期への過渡期として,身体面の変化を重視すれば更年期という用語が使われ,精神面の変化に注目すればこの年齢の頃は更年期と退行期とをまとめて初老期と今日では表現されている。
人間の一生において初老期は青年期とともに精神と身体の急速な変化を迫られる時期であり,このような不安定な時期には精神障害も多発することが予想される2)。はたして実際に多発しているのであろうか。このことを実証的に考えてみるために,某大学医学部附属病院精神神経科の1954年度とその約30年後の1983年度の初診患者数を性別・年齢層別に調査し,その結果を1954年度について図1に,1983年度について図2に示した。両年度の男女ともに青年期の患者の受診数が最も多い。
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