Japanese
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境界領域
癌と内分泌—そのⅣ—癌と糖尿病
Some endocrinological remarks on cancer, No.4. Diabetic glucose intolerance with regard to cancerogenesis
渋沢 喜守雄
Kishuo Shibusawa
pp.47-57
発行日 1963年1月10日
Published Date 1963/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202737
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はしがき
前回のべられたように,ある種の臓器の癌は肥満者に発生しやすい傾向がある。たとえば,胆嚢癌・膵癌・乳癌などは外科領域で経験されるところである。産婦人科領域では子宮体部癌がそうであると聞いている(前号)。その他の臓器の癌でも,肥満者に多く,また,肥満者では癌の発育が良好であるという説が少なくない。肥満者に何故にある種の癌が好発するかはもちろん明らかでない。Tannenbaumの長年月にわたる研究の成績でも,本邦の宮地(1961)の成績でも,カロリーの過剰の摂取という点のみが,目下のところ,唯ひとつの連関因子といわれているにすぎない。発育癌における肥満の意義を,臨床的に分析することは決して容易ではない。前回は,代謝率を考慮すべく,甲状腺機能をうかがい,ある種の癌において,軽度の甲状腺機能障害のしばしば見出されることを指摘した。また,婦人科専門家にはすでに周知のところであるが,肥満者にはestrogensの代謝異常がみられやすいようである。たとえば,Twombly (1961)によれば,estradiol−17β—16C14注射後12時間の尿に排泄される放射能総量は,体重150ポンド以下の婦人22名平均68%,体重150〜240ポンドの婦人30名平均56%で,この両者の差は有意であるといわれる。
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