症例研究
妊娠40週に蟲垂炎と誤診せる卵管溜水腫莖捻轉の1例
小澤 五一郞
1
,
長谷川 雅亮
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科教室
pp.193-196
発行日 1950年5月10日
Published Date 1950/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200345
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緒言
卵巣腫瘍の莖捻轉は屡々遭遇するも之と臨床上殆んど同一の症状を呈するものに,卵管溜水腫の莖捻轉あり,されど此れが頻度は前者に比し遙に少なく,歐米に於ては1891年Bland-Suttonにより初めて報告されて依り,既に100例餘に達するも,吾が國に於ては,淺學なる余等の捗獵の小範圍に於ては,昭和7年橋本により初めて報告されて依り,今日迄20數例に過ぎず,就中之が妊娠と合併せる例に就きては尚少なく,中川(9ヵ月)廣田(4ヵ月)宇美(3ヵ月)の3例にして,歐米に於ても,Savage (38週) Stevens (8 1/2月)Eastmann (7 1/2月) Mc.Kerrow (6ヵ月) Hart—mann (5ヵ月) Pinard-Paquay (3ヵ月)等の10數例に過ぎす.余等は最近妊娠40週にして,分娩豫定日5日前の高年初産婦に於て,蟲垂炎の診斷の下に,帝王切開術を同時に施行せんとして開腹し,初めて右例卵管溜水腫の莖捻轉なりと判明せし1例に遭遇せるを以て並にその概要を報告する次第である.
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