合併増大号 今月の臨床 生殖医療の進歩と課題─安全性の検証から革新的知見まで
扉
吉村 𣳾典
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科
pp.5
発行日 2014年1月10日
Published Date 2014/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103576
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ヒトはあくまで生物であり,ヒトもまた生物の例外ではなく,生殖によって子孫をつくり出す.その一方で,あくまで哺乳動物であるヒトはその生殖能力に限界があり,生殖により次世代をつくり出すことができない場合もある.超少子化社会を迎えたわが国においても,子供を望むカップルの約15%が不妊症・不育症に悩んでおり,女性の社会進出に伴う晩婚化によって不妊を訴え,医療機関を訪れる女性が多くなってきている.
近年の生殖医療の進歩にはめざましいものがあり,生殖現象の解明のみならず,ヒトの生殖現象を操作する新しい技術も開発されている.細胞生物学や先端生殖工学技術の飛躍的進歩に伴って生殖医学も革命を受けつつあるといっても過言ではない.このような生殖医学の発展は,実は発生生物学や生殖内分泌学の進歩に負うところが大きい.この生殖現象の深くかかわる生殖医療は,新しい生命の誕生がある点で,すでに存在する生命を対象とする他の医療と根本的に異なった特性をもっている.21世紀に入り,ますます先端生殖工学技術は進歩をつづけている.とりわけ体細胞クローン技術や胚性幹細胞の再生医療への応用は,今後の生殖医療の展開にブレークスルーをもたらすかもしれない.
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