今月の臨床 ハイリスク妊娠─ここがチェックポイント
ハイリスク妊娠―最近の動向
中林 正雄
1
1母子愛育会愛育病院
pp.1367-1371
発行日 2010年10月10日
Published Date 2010/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102473
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
ハイリスク妊娠とは,妊娠・分娩時に母体または胎児・新生児に,何らかの異常が発生する危険性の高い妊娠のことをいう.近年,ハイリスク妊娠が増加しているが,その理由として,(1)晩婚・晩産化による高齢妊娠の増加,(2)これまで妊娠・出産が困難とされたさまざまな疾患を有する女性が,周産期医療の進歩により妊娠・出産が可能となったこと,(3)不妊症患者に対する生殖補助医療(assisted reproductive technology : ART)の進歩に伴い,多胎妊娠の増加,早産・低出生体重児の増加などの新たな要因が関係している.
一方,最近の社会問題である全国的な産科医の減少,分娩施設の減少,医療訴訟の増加などのため周産期医療システムの再構築と新たな周産期医療提供体制の確立が求められている.
周産期母子医療センターなどの基幹病院は,医療資源の集約化・重点化を行い,ハイリスク分娩を集中的に管理し,常時母体搬送・新生児搬送の受入可能な状態に維持することが必要である.一次・二次分娩施設は低リスク・中等度リスク分娩を主体的に管理し,必要時には早目に高次医療センターへ搬送することが必要である.このような医療施設の機能別役割分担による周産期医療システムの効率的な運用のためには,妊娠・分娩にかかわる産科医が妊娠のリスク評価とハイリスク妊娠の管理指針について十分に理解しておくことが大切である.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.