今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
I 周産期
【痔核(妊娠中)】18.痔核が大きくなり,疼痛,痔核の脱出がみられる妊婦です.
中田 雅彦
1
1山口大学医学部産婦人科
pp.394-395
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101448
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1 診療の概説
痔とは,直腸や肛門付近の疾患を含めた総称で,痔核(いぼ痔),裂肛(切れ痔),痔瘻(うみ痔)に大別される.このなかで最も多いのが痔核で,痔疾患の半数以上を占め,妊婦の3~4割は痔に悩んでいる.妊娠中は,便秘になりやすいこと,内分泌環境の変化によって静脈壁が弛緩すること,循環血液量の増加と増大した子宮による総腸骨静脈などの圧迫に起因する直腸肛門静脈内圧の亢進などによって,痔疾患に罹りやすく,妊娠中期以降に多い.
直腸や肛門の静脈叢は門脈系の最下部に位置し,静脈弁がないためうっ血しやすい.うっ血の持続により,静脈壁が拡張して静脈瘤となり痔核が派生する.痔核(いぼ痔)は内痔核と外痔核に大別され,肛門管の歯状線の上方・下方で分類される.内痔核は,上直腸静脈叢より発生する.痔核の大部分は内痔核で,肛門外に脱出することが多い.内痔核が進行すると痔核が大きくなり,肛門外に脱出するようになり,脱肛と呼ぶ.脱肛がひどくなると,排便時や歩行時でも疼痛を伴うようになる.また,直腸粘膜下の拡張した静脈叢より出血をきたすことがあるが,出血自体は神経支配に乏しい組織が起因するため疼痛を伴うことは少なく,排便後の自然還納や用手的還納ができない場合に特に疼痛がひどくなる.外痔核は,歯状線より下方の肛門静脈叢から発生したもので,静脈血栓として黒いしこりができる.感染などを契機に増大すると,有痛性の暗赤色の腫脹を呈するが,神経分布によって激しい疼痛を伴う.
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