連載 婦人科超音波診断アップグレード・8
ダグラス窩の経腟超音波所見
佐藤 賢一郎
1
,
水内 英充
2
1新日鐵室蘭総合病院産婦人科
2旭川みずうち産科婦人科
pp.1391-1398
発行日 2004年11月10日
Published Date 2004/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100675
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1 はじめに
経腟超音波によるダグラス窩所見の代表的なものとしては液体貯留所見が挙げられ,腹水,出血,膿貯留があり得る.腹水の存在は,卵巣腫瘍の悪性診断の補助,骨盤内炎症性疾患(以下,PIDと略),内膜症などの存在や,排卵後であること,および腹水貯留を惹起する他科疾患などが想定され,出血は子宮外妊娠,卵巣出血などの出血性疾患を,膿貯留は卵管・卵巣膿瘍,ダグラス窩膿瘍,虫垂炎の破裂などの炎症性疾患が考えられる.
経腹超音波と比較して解像度に勝る経腟超音波を用いても腹水,出血,膿貯留の鑑別は必ずしも容易ではないが,臨床所見と合わせて考察することによりある程度診断可能な場合もあり得る.液体貯留所見としては,量や貯留部位(例えばダグラス窩のみか,膀胱子宮窩のみか,子宮周囲全体かなど),エコー輝度,均質性が重要である.また,単に液体貯留部位のみの観察に終始するのではなく,腹膜や直腸,腸管表面の観察も重要で,悪性腫瘍の腹膜播種病巣の検出や悪性腹膜中皮腫などではある程度特徴的な所見を示すため,術前診断に非常に参考になる場合がある.
本稿では,経腟超音波によるダグラス窩所見について検討してみたい.
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