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はじめに
変形性膝関節症との付き合いは本を正せばかなり以前からのものであった.横浜市立大学医学部整形外科に入局して同時に大学院に進んだが,その時に,前任の土屋弘吉教授の指導の下で,骨粗鬆症と骨折における窒素バランスと副腎皮質ホルモンの変動というテーマで研究を始めた(1962年).これは医局挙げての研究で,骨折後の副腎皮質ホルモンの動向を血中および尿中の17KSおよび170 OHCSを指標として調べることにした64).この研究がヒントになり,後の2002年に高位脛骨骨切り術(以下HTO)を施行3週後に蛋白同化ホルモンを投与することによって骨癒合を促進させることを考えついたことにつながったのであった.結局この実験は40年以上たって役に立ったことになった.
1966年,アメリカはニューヨーク市のコーネル大学に留学した時代,昼間はHTOの追跡調査,夜はラットにおける大腿骨骨頭核の出現と性ホルモン(エストロゲン)や下垂体ホルモンについて研究を続けた.これらのことからラットの骨格は年齢に比して非常に若いこと,つまりラットの寿命は3年であるのに寿命が終わる時ですらまだ骨が成長して,長管骨の骨端線がまだ閉じていないラットもいることなどを知った.骨の成長という視点からすると人間で言えば6,7歳で子供を産んで寿命が12~13歳で終わってしまうという具合になる.ラットの骨格は一生若いのである.また骨端の形態が人間と異なり,骨端軟骨の全域が石灰化してから骨端の辺緑の一部で骨化が始まり全体に及ぶことがわかった15).人間のように骨端の中央が石灰化してそこが仮骨してくる骨端核とは大いに異なるのである.このことからラットにおける骨・軟骨についての種々の現象は人間の高齢者には当てはまらず,またラットには骨・軟骨の老化という現象はないのであることもわかった.これら動物の実験結果は人間に,特に高齢者には全く当てはまらないことが私の結論である.特に薬の効果にいたってはまさにその通りである.結局このことが後の変形性膝関節症の治療上で重要なことであることがわかってきた.
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