コーヒーブレイク
医事紛争体験記―ジョーズに学ぶ
板野 聡
1
1寺田病院外科
pp.234
発行日 2008年2月20日
Published Date 2008/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102035
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- 文献概要
最近のことですが,医事紛争に巻き込まれ被告席に立たされるかもしれないと慌てることがありました.以前にも書きましたが,頭のなかで例の映画「ジョーズ」のテーマ曲が何度も鳴り響くこととなりました(第61巻12号参照).問題は,直腸癌の術後経過をみるなかで腫瘍マーカーの増加が確認され,胸部での再発が発見された患者さんとの揉め事でした.同じ経験をお持ちの先生方には共感と慰めを,未経験の先生方には教訓と心の準備を,大病院でもっぱら後医となる先生方には注意と抗議を込めて,ここにご紹介します.
経過観察中に腫瘍マーカーが増加し,当院で検索しましたが再発部位を特定できず,再発部位の検索と治療をお願いして紹介をしたのですが,その紹介先の先生の一言が紛争の発端となりました.胸部に病巣を発見したまではよかったのですが,そのお医者様が得意満面に(私は見てはいませんが)「この胸部の腫瘍は原発性で,早くからあったものを見落としていたのではないか」と仰ったのでした.患者さんのお話では,そのお医者様はその説明を笑いながら行い,「あんたも何を診てもろうてたんや」と付け加えられたそうです.患者さんは,患者さんご自身も馬鹿にされたような気持ちになり,それまでの当院への感謝の気持ち以上に抗議の気持ちが沸いてきたそうです.県医師会の紛争担当の先生に相談したところ,「またですか.そうした後医の無責任な一言で起こるトラブルが一番多いのです」とのご返事で,なるほどこれが「後医の言災」(私の造語,ゲンサイと読みます)なのかと実感することになりました.
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