連載 症候学メモ余滴・15
ホーキング博士の病気—疾患名と分類名の混同
平山 惠造
1
1千葉大学
pp.290
発行日 1997年3月1日
Published Date 1997/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901086
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今から数年前,イギリスの宇宙物理学者ホーキング博士が日本を訪問し,各所で講演をして回られた。四肢,顔面に筋萎縮があり,僅かに残っている手指の力で,自分の電動式車椅子を操作される様子がテレビのニュースに映し出され,人々に感銘を与えた。博士の筋萎縮はその時すでに十数年の歴史をもっているようであった。
その頃,ある神経内科医の先生から,「博士の病気がテレビで筋萎縮性側索硬化症と報じられているけれど,本当でしょうか。という主旨の質問を受けたことがある。私は実際に博士を診察したわけではないが,その経過の長さと運動障害の程度,指の使い具合,顔貌などテレビ画面で見て取れる限りから,筋萎縮性側索硬化症ではないと思う旨の返事をした。
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