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編集後記
柳澤 信夫
pp.1043
発行日 1989年10月1日
Published Date 1989/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206415
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- 文献概要
本号は原著のみの号である。臨床研究は読んで楽しいが,研究論文となると専門外のことは内容も意義もわからないことが少なくない。本号の論文はまだ読んでいないので,以下のことは一般論として受けとっていたゞきたい。数年前のことであるが,私の関係している国際誌のeditorと後世に残るべき論文の価値について話し合ったことがある。一流の国際誌であっても,後世にその意義が伝えられる論文は10%,甘くみても20%ということで意見が一致した。この種の話はすでに言い古された感があり,人によってパーセンテージが違うが,要は論文として出版されても,それをもって独創性に富んだ論文として承認されたこととはならないという点である。まだ神経系についてあまり知られていないことが多いことから,方法および結果の解釈に瑕疵がなければ,一読してその意義が明確にならない論文で採用することになる。国内誌も勿論同じである。換言すれば雑誌の編集者は論文の良否は判定してくれないということである。たゞ高い評価を得て投稿論文数が多い雑誌は,質の高さをもとに採用するので,そのような雑誌に採択されれば質の高さが認められたこととなり専門外の人達からも喜んでもらえる。
最近大学の教職の選考において,論文数のみでなく,impact factorの多い雑誌にどれだけ論文を発表したかを評価する傾向が出てきた。それはそれで充分な理由もあることだが,論文の数の多寡をもって研究活動のレベルを推し量る風潮とともに,若干寂しい感じをもつ。
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