「精神医学」への手紙
Letter—パニック障害に合併した高コレステロール血症の治療
北村 秀明
1
1国立療養所犀潟病院精神科
pp.448
発行日 1997年4月15日
Published Date 1997/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904319
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パニック障害患者は冠動脈疾患による死亡率が高い2)とする報告がある。発作的な死の恐怖におびえる患者に対し,我々精神科医は生命を脅かす病気ではないと保証して治療に当たってきただけに,これら研究成果に対して一抹の戸惑いがある。血清コレステロール値を検討したBajwaら1)は,大うつ病患者と比較してパニック障害患者の血清コレステロール値が高いと報告し,その理由として,予期不安などのため亢進したノルアドレナリン系の影響を考えた。しかし,山田ら3)はこの相対的高コレステロール血症はパニック障害の重症度と相関せず治療後も変化しなかったことから,パニック障害に特異的な内因性の要因を想定している。
最近筆者は高コレステロール血症(最高364mg/dl)を合併した35歳の男性パニック障害患者を治療した。パニック発作はalprazolamとimipramineによりコントロールされたが,高コレステロール血症はパニック発作消失後11か月を経ても持続し,血清コレステロールは高値のままであった。実父が心筋梗塞で死亡したという背景も考慮して,食事療法とコレステロール合成酵素阻害剤による薬物療法を開始したところである。本症例のように冠動脈疾患の家族歴があり,血清コレステロールが絶対的高値を示すような場合には,遺伝的に受け継いだ脂質代謝異常も考えられるので,患者にその旨を説明して,初期の段階から,パニック障害の治療と並行して高コレステロール血症の治療も行うべきと考える。
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