巻頭言
精神科リハビリテーションへの誘い
東 雄司
1
1和歌山県立医科大学神経精神医学
pp.688-689
発行日 1993年7月15日
Published Date 1993/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903474
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かつて,我が国の精神科病院でも,マックスウェルジョーンズに従って病棟内を治療共同体(therapeutic community)として構成し,病者の健常な部分へ働きかけて,環境への適応を図り,病状の安定を期待するという考えがもてはやされた時期があった。やがて,長期になりがちな入院患者をいかに退院,社会復帰させるかについて,学会などでも多くの議論を呼んだが,容易に現実のものとはならず,いわゆる中間施設構想も安上がり医療の隠れみのにすぎないとして反対が強く,一般化するに至らなかった。しかし,外来デイケアについては,まず,全国の保健所や一部の独立施設などで実施され,次いで医療費の点数化に伴って大学や精神病院でも積極的に実施するところが多くなったが,和歌山県のように精神科医療機関ではいまだ1カ所も設置されていないところもある。ところで,全国の小規模共同作業所には心身障害者にまじって精神障害者の受け入れも進み,数では保健,医療機関のデイケアに通所するものを上回るようになり,さらにこうした作業所を基盤にして地域家族会や当事者たちの自助グループが結成されている。
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