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16歳未満で発症が確認された48例の分裂病症例について,平均経過年数6.4年後の調査から初期薬物療法と予後との相関を考察した。あわせて前駆症状や発症様式について文献的知見を検討しながら,症候論的考察を加え,次のような結果を得た。
(1)前駆症状は,1型:性格変化が強迫行為を主とした行動上の異常を呈してくるもの(8例),2型:無為自閉化や気分変動が中心をなし攻撃性のみられないもの(16例),3型:上記1,2型の混在するもの(12例),4型:偽神経症的・境界例的症状が前景をなすもの(12例)に区分された。
(2)発症様式を,一般に用いられているように潜行性,亜急性,急性の発症群に分類した。潜行性群は21例(44%)で上述の各前駆症状を広く持ち,最も早発(12.0歳)であった。亜急性群は17例(35%)で前駆症状2型をとるものが多く,平均初発年齢は13.0歳であった。急性群は10例(21%)で,前駆症状4型との親和性が注目された。平均初発年齢は最も遅く13.8歳である。各群とも初診年齢は14歳前後(13.5〜14.2歳)であった。
(3)予後を初期薬物療法との関連でみると,潜行性発症群では初期の診断学的困難性から薬物治療の導入が遅れがちであるものの,その後の増量等により改善される可能性のあることがひとつの特徴として指摘された。亜急性群では,初期投与量が中等量以上であることが予後的には重要で,初期治療に失敗するとその後の増量によっても改善は望まれない傾向にある。急性群では,その発症の特徴上全例が早期に中等量以上の投与を受け,ともかくも一過性には良好な寛解状態をみるが,中断しやすく,また維持投与量が少なすぎて結果的に再発を繰り返すことが多く,寛解後の維持治療の重要性が指摘された。
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