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昭和59年春の医師国家試験には,精神医学が選択科自の中に入っている。これまでの数年間は,精神医学が春の試験に入ることもなかったので,国試のことは全くと言ってよいほど念頭になく,講義や実習をやってきたのである。卒業試験が始まる頃となると,クラスの代表と称するものが入れかわりやって来て,国試に精神科があるので,今回の卒業試験はそれに準じた出題をして欲しい,と言うのである。そこで久しぶりに「国試問題集」を開いてみて驚いた。こんな問題はとても私にはつくれない。試みに自分でもやってみたが,どちらとも判断がつかないものもあり,「答」欄をみてはじめて,「なるほど」とうなづくものもあった。どなたがおつくりになるのかは知らないが,大変なご苦労であろう。客観主義のもとに,コンピューター採点機に合わせようと,四苦八苦されている様が目に見えるようだ。それはともかく,学生がしつこいので,それを一部かなえてやろうと思った。「問題集」の中から適当にピックアップすればよいのだろうが,それではあまり芸のない話になる。自分でこの手の問題を作製してみる気になった。
相当苦労はしてみたものの,5項目から1つを選択するような問題は,とても私にはできないことが分るのに時間はかからなかった。そこで短い文章を書いて,それが合っているか間違っているか判断させ,間違っておればその部分を訂正させるような問題とした。出題は60問であるが,ここでお話ししたいのは最後の第60問である。問題は,「精神医学はこの半世紀,その基本的事項についての進歩はほとんどなかった。精神医学など本当の学問ではないという人もいる。しかし精神病患者がいる以上,精神医学はそれにこたえなければならない。」この全文について,これでよろしいか,あるいは間違っているのか,間違いとするとどう書けばよいかを問うたのである。
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