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Ⅰ.はじめに
リハビリテーション(以下略称Rh)という言葉は近来かなり広範囲にわたつてとりあげられてきているが,何もRhという語をつかわないにしても,一部の有志者は同様な趣旨で昔から熱心に,そして,それこそ血みどろといつても過言ではない地味な活動を昔からやつてきている。
日本でも厚生省が積極的にとりあげたのが昨年であり,リハビリテーション学院も泥縄の感はまぬかれないが一応発足した。
Rhとは慢性ではあるけれども一生のうちではわずかな罹病期間の疾患の訓練的補助活動というようなものから,不具あるいは進行性疾患,再発の危惧のある疾患,いわゆる持病などそのままでは社会に適応できないが,なんらか手をうつことによつて病気の進行を妨げうるというような場合に生活の楽しみ―生産的側面を含んだ―をさせるというような幅広い施策を含むものである。それゆえにRhについては病人の,または病気であつた人の人権尊重と平等な社会保障制度なしにはその発展を期待しうるものではない。
元来一部医療職員の熱意や,ボランチアーとか慈善運動家たちの情熱と犠牲によつて支えられてきたわが国のRh活動はすでに厳しい限界を示してきている。Rh活動の必要なことを痛感すればするほど,民間から国家的な活動に切り替えられる施策が1日も早いことを願わざるをえない。
Rhとひと口にいつても,その対象とする疾患によつてその方法が異なつてくる。この春発足したRh懇談会においては内科系,外科系という区分をしているが,われわれ精神医学畑の者からみるならば精神障害者のRhは内科,外科を合わせた身体障害者のそれとは当然異なつたものであると考えられる。
Rh活動は医師,看護員が参与するのみならず臨床心理員やP. S. W.,OT. RT.,等々のチームワークを必要とすることは後でも述べるが,一次的な身体障害と一次的な精神障害とでは,社会性の再獲得の難易や,その熱意においても当然異なるものであり,Rh活動の開始される時期が異なつたり,またその方法が量的にも質的にも異なつてくるのは当然である。
たまたま著者が精神科のRhについて原稿を依頼されてからのち,同じ医学書院から「綜合医学」でRh特集が2号にわたつて発行された。その中には加藤(松沢病院)が精神科からみたRhを執筆している。というわけでいまさら著者が重複的なことを書くときわめて曲のないものになつてしまう。そのようないきさつもあるので著者は加藤が概説的に精神科Rhを述べたものであるとして,ここではいわば各論として,著者らが日常扱わざるをえないところの分裂病をとりあげてみようと思う。
そこでここでは著者らが昭和医大付属鳥山病院で約5年間にわたり経験したことをもとにして若干感想めいたことを述べるが,詳細な点については後刻おのおの独立した報告として担当者から出される予定である。
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