巻頭言
人材育成の場としての大学精神医学教室
笠井 清登
1
1東京大学大学院医学系研究科精神医学
pp.106-107
発行日 2009年2月15日
Published Date 2009/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101359
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
東京大学医学部精神医学教室の運営に携わり始め,日々の雑事をこなすだけで精一杯ですので,このような欄に寄稿させていただく資格はまだないと自覚しております。自分自身の行動を律するための覚書きと位置づけて執筆させていただき,読まれた方々のご参考に万が一にでもなれば,ということでお許しいただきたいと思います。
英国Kings Fundは,同国の精神疾患の社会経済コストを年間約10兆円と試算しており1),Nature誌には“Mental wealth of nations”との提言がなされています2)。精神医学の重要性はこうした社会的要請の高まりから明らかですが,日本の精神医学・医療を取り巻く現状は,診療報酬・医師配置の面でも,研究費配分の面でも,きわめて不十分といわざるを得ません。そのうえ,大学の人員削減,法人化後の経営圧力,新研修制度後の若手医師の地域偏在などの波を受け,どの大学精神医学教室も疲弊していると思います。このような厳しい状況の中で,大学精神医学教室に固有の役割である人材育成という軸がぶれないように進めていきたいと考えています。
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.