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はじめに
精神科外来の待合室では,女性が目立つ。総合病院の精神科病棟でも入院患者は女性優位である。ちなみに当大学,精神科病棟46床中,だいたい40床弱を女性で占めている。大学という特殊性もあるが,3つの保護室もほとんど女性が使用し,特に長期使用者は明らかに多い。一般精神科専門病院ではどうだろう。全体人数の割合はそれほどの差はないが,女性の病棟のほうが落ち着かない患者が多いように思う。総人数ではそれほどの差がないのに,精神科治療現場でなぜ女性が目立つのか。
その理由はいろいろ推測される。女性に多い疾患といえば,摂食障害や一部のパーソナル障害,解離性障害および統合失調感情障害である。男性では,若い発症の統合失調症のほか,発達障害,器質性精神障害などがある。男性は器質的に弱く,女性は強い印象がある。しかしそのなかで筆者は,以前より,女性の精神障害にある特徴を指摘してきた。それは一言で表現すれば精神病像の非定型化である。この非定型という表現に抵抗感を持つ方もいると思われるが,ここではその論議はしないことにする。その究極的な病態が非定型精神病である。いわゆる非定型精神病と表現されることも多い。しかし本論文ではいわゆるはつけない。女性の精神医学を語るとき,現在症例は多いわけではないが,非定型精神病はその主軸の一つと認識している。それ以外の精神疾患でも,女性の場合,臨床症状が非定型化しやすい。女性性が症状を非定型化させるようにみえる。それが治療抵抗性,遷延化させ,精神科臨床で女性が目立つ一因になっていると考えている。
本論文では筆者が女性の精神医学として最も重要視している非定型精神病の臨床をできるだけ詳細に紹介する。非定型精神病の診断に至らなくても,その要素を持った女性の精神障害は多い。そのためにも最も中核である非定型精神病を理解することは必須である。また後半には,その発症準備状態または関連障害として考えられる月経関連症候群を紹介する。また特に体温リズムの観点に絞ってその要点を概説することにした。
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