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胃粘膜の萎縮は,内視鏡検査では血管透見のあるやや白色調の菲薄な胃粘膜として診断される(Fig.1).H. pylori(Helicobacter pylori)感染胃では,萎縮粘膜は幽門側から胃体部小彎側,そして大彎側に向けて進展すると考えられており,萎縮粘膜と非萎縮粘膜の境界が内視鏡検査で明瞭に視認できる.この境界線が病理学的にも萎縮粘膜(幽門腺化生または腸上皮化生)と非萎縮粘膜(胃底腺粘膜)の境界であることを証明したのがKimuraとTakemoto1)である.彼らはこの境界線を内視鏡的萎縮境界(endoscopic atrophic border)と命名した.前後壁の境界線が体部の小彎側で閉じているものをclosed type,閉じていないものをopen typeと命名し,その程度をそれぞれ3段階に分類した.これを木村・竹本分類(木村・竹本の萎縮診断)という(Fig.2a).H. pylori発見の10年以上前に現代の内視鏡よりも劣っていた機器で現在にも通用する内視鏡診断と分類法を提唱したことは素晴らしい業績である.その後,この分類には改訂が加えられ,現在ではSatohら2)(Fig.2b)とNakajimaら3)(Fig.3)の改訂版が広く用いられている.前者はパターン認識の図で境界線の範囲がわかりにくい.一方,後者は境界線の範囲を明確に定義しているので臨床応用が比較的容易である.また,H. pylori未感染相当の萎縮のない胃をC-0とし,逆に体部萎縮が高度に進行した胃をO-4またはO-pとしている.O-pのpはpan-atrophyという意味である.Satohらの改訂版とNakajimaらの改訂版は一見異なる萎縮診断と思われがちであるが,どちらの図を用いても萎縮の診断結果は同じとなる.後者はH. pylori感染胃炎のみならず,未感染やA型胃炎(自己免疫性胃炎)などにも対応可能である.オリジナルの木村・竹本分類と区別するために,数字はローマ数字でなくアラビア数字で記載する.木村・竹本の萎縮診断はH. pyloriの過去の感染例でも用いられるが,既感染例では萎縮境界が不明瞭となる症例も多く,画像強調内視鏡(image enhanced endoscopy ; IEE)で観察するほうが診断しやすいことがある.
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