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はじめに
胃炎は臨床経過から急性胃炎と慢性胃炎に分類されるが,一般に胃炎というと慢性胃炎を意味する.急性胃炎は急激な心窩部痛,吐き気,嘔吐,時に吐・下血で発症し,上部消化管内視鏡検査で凝血塊の付着した多発性のびらん,あるいは浅い潰瘍を認めることが特徴的所見である.一方,慢性胃炎は,本邦の日常診療では明確な診断基準がなく用いられており,大きく分けて,心窩部痛,胃もたれ,吐き気などの上部消化器症状を訴える患者に診療上の病名として(症候性胃炎),胃X線造影検査や内視鏡検査でびらんや萎縮などの異常所見を認めた場合に形態学的病名として(形態学的胃炎),胃生検組織や切除胃で病理組織学的に診断する病理組織学的診断として(組織学的胃炎),の3つの意味で用いられてきた.形態学的胃炎や組織学的胃炎は必ずしも自覚症状を起こすものでなく,また,組織学的胃炎の多くはHelicobacter pylori(H. pylori)感染が原因であることが明らかになり,漫然として用いられてきた慢性胃炎の診断名は,本来の,病理組織学的に確定診断された場合に限って用いるようになってきた.
一方,消化性潰瘍や胃癌など症状の原因となる器質的疾患を認めないが心窩部を中心とした消化器症状を訴えるものに対しては欧米において機能性ディスペプシア(functional dyspepsia ; FD)という病名が提唱されており,本邦でも保険診療上の病名として確立されつつある.一方,主に内視鏡所見で診断する形態学的胃炎は,これまでの確立されてきた臨床研究を継承し,胃癌や消化性潰瘍の発生母地として,さらにH. pyloriの発見後は,H. pylori感染を内視鏡的に診断する方法として重要になった.
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