--------------------
編集後記
大柴 三郎
pp.356
発行日 1984年3月25日
Published Date 1984/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106988
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
胃癌の発育進展型式やスキルスの初期像などの考え方の進歩は数多くの症例の集積,見逃し例のretrospective studyが大きい役割を占めていたと思う.Crohn病の病態解明の手掛かりも同様に長期にわたる詳細な経過が重要な資料を与えてくれるものと思われる.Crohn病は最近日本でも増加していると言われるが,まだまだ欧米諸国に比べると症例は少ない.その少ない症例の1つ1つを大切にしてゆくことが日本独自の研究成果を生み出してくれるものと思う.「胃と腸」13巻でかつて3号にわたるCrohn病の特集が出版され,先達の計り知れない努力の結晶がその診断学を確立している.しかし治療に当たってはIHVやED療法が新しい局面を開いてくれたとは言うものの患者の社会復帰を考えるとき困惑するのが現状であろう.
本特集の長期予後に関してみると内科的にしろ,また,外科的にしろ治療法の限界が如実に示されている.どんな治療法を選んでみてもそれぞれの予後に関しては診断された時点で既に決定されているような宿命的予後にも受け取れる.一方,寛解を得て所見は残しながらも固定してしまう例もみられることは将来への希望を残すものでもある.いずれにしてもCrohn病という若い人を侵す難病が1日も早くコントロールされ,社会生活をそれほど不自由なく過ごせるように,その実態の把握が期待される.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.