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編集後記
磨伊 正義
pp.128
発行日 1992年1月25日
Published Date 1992/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106707
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本誌13巻1号で胃癌の発育経過が特集として取り上げられてから15年経過した.その間,各施設で胃癌の経時的変化を捉えた症例が多数集積され,胃癌の自然史が徐々に解明されつつある.
一般的に,胃粘膜内に発生した1個の癌細胞が分裂増殖を繰り返し,生体を死に至らしめるまでには15年から20年という長い歳月を要することが癌生物学の研究から予測されており,臨床的に顕性癌としてわれわれが見ているのは後半の1/4の期間にすぎない.臨床的に発見可能な早期胃癌である期間もかなりの長さに及ぶことが諸家の研究で指摘されている.しかしながら,胃癌の増殖する過程は一様均一でなく,形態学的にも時間的にもその増殖態度には大きな個体差がみられる.また,早期癌から進行癌へ進展する時点,特に深部浸潤や転移が惹起される際に,癌細胞の増殖を加速する何らかの要因が関与していることが推測されているが,いまだ不明な点が多い.
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