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編集後記
斉藤 利彦
pp.736
発行日 1994年6月25日
Published Date 1994/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105840
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本誌で多発胃癌を主題として取り上げたのは,今から24年前の1968年である.今日,種々の問題を抱えて再び主題として多発胃癌が取り上げられた意義は大きく,殊に,多発胃癌に対する臨床医の対応のあり方も考えさせられる.例えば術前診断についても相変わらず主病巣に目を奪われ,胃内をくまなく観察していないのではないだろうか危惧される.しかし,多発胃癌の頻度は24年前の5%前後から10%前後と増加し,しかも早期胃癌での多発が増加している.反面,術後の病理組織学的検索により発見される多発胃癌も多く含まれ,切除胃の検索のあり方でも頻度に差異を生じていることも事実である.
24年前と異なり,内視鏡的治療がここに加わったことも注目しなければならない.治療後の経過観察中に発見される異時性胃癌もみられることから,内視鏡的に治癒と判定されても,より一層,経過観察が重要になってくる。QOLが叫ばれている現在,これまでの積み重ねられたデータをもとに常に多発胃癌を念頭に置いて診断に当たらなければならない.また,多発胃癌の組織型,背景粘膜,予後に与える影響などを考えると,本号もより一層,読者の興味をそそることと思われる.
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