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編集後記
三木 一正
pp.1222
発行日 2000年8月25日
Published Date 2000/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104858
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薬剤性腸炎の起因薬剤としては抗生物質によるものが最も多いが,近年の高齢化社会を反映し,世界で一番多く処方されている消炎剤であるNSAIDsの使用頻度がわが国でも増えている.また,大腸癌検診による便潜血検査や全大腸内視鏡検査の普及とともに,NSAIDsに起因した薬剤性腸炎の報告例が増加しつつある.本号では,NSAIDs起因性腸炎の臨床像を明らかにするとともに,抗生物質起因性腸炎やそのほかの薬剤性腸炎の臨床像について,鑑別診断を含めて再整理した.なお“薬剤起因性”の診断基準として,①発症時(あるいは発症直前)に起因薬剤の投与がなされていること,②糞便あるいは生検組織の培養検査が施行され,感染性腸炎が否定されていること,③起因薬剤の投与中止のみで,臨床症状および画像所見(X線・内視鏡所見)の改善を認めていることの3条件を満足すること(飯田)とした.
NSAIDs起因性大腸病変は潰瘍型と腸炎型に大別され,発生機序も異なる可能性が示唆されている(松本ら,八尾ら,飯田)が,両者の病態・発生機序の解明が待たれる.消化管検査に携わる消化器専門医だけでなく,一般内科医や整形外科医なども本症の存在と臨床像を熟知しておく必要があり,本号が1人でも多くの読者の明日からの診療に役立つことを期待したい.
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