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今日,胃食道逆流症(GERD)の概念が普及し,その病態および治療が討議されるようになった.逆流性食道炎はGERDの一現象をとらえた分野であるが,客観的に検討できる病態であり,過去に2回(18巻11号,27巻9号)本誌で取り上げられてきた.その後,分類に関しては,ロサンゼルス分類,日本食道疾患研究会分類が策定された.治療に関しては,PPIの普及,内視鏡下手術による治療成績の蓄積が得られている.一方,HP除菌による逆流性食道炎の発生に新たな問題点も報告されるようになった.以上のことを踏まえ,時代的進歩を図ってきた本症の最近10年の変化・問題点を中心に,第一線でご活躍中の経験豊富な専門家に再び考察していただいた.
序説で神津が述べているように,いま再び逆流性食道炎が主題に取り上げられた理由は,①欧米と同じようにわが国でも今後増加傾向にあるのか,②どのような症例・病態が内科的および外科的治療に奏功を示すのか,③その病態は胃の運動面からみるのか,食道を重視した立場からみるのか,などの結論に迫れるか,という点である.本症の時代的変遷は確かに認められるが,地域,民族,年代,性別によって差異を認めることが明らかになった.しかし,その病態についてはいまだ不明な点が多いと言わざるを得ない.治療法についてはPPIの登場で大きく前進した.予後も楽観的になったと言える.最近,わが国のGERD研究会では,欧米で生まれ,日常診療で使用され始めている“QUEST問診票”の日本語版を試作し,逆流性食道炎の診断をスコア化(4点以上)する試みもあるが,これも未完成である.本号の多くの情報が,より客観的で簡便な本症診断法の確立およびその診療に大いに役に立つことを期待したい.
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