特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る
扉
上原 由紀
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1藤田医科大学医学部感染症科
pp.990-991
発行日 2022年6月10日
Published Date 2022/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402228291
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感染症は臓器横断的疾患であり,内科のみならず他の領域でも必ず遭遇する疾患である.感染症診療は,丁寧な問診や全身の診察で感染巣を突き止め,原因微生物を突き止め,最適な抗菌薬を投与し,その効果を判断する…という地道な作業の繰り返しである,という考え方が21世紀最初の20年でようやく浸透しつつあると感じていたが,2020年からの新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴って状況は一変し,「発熱患者の診察は短時間で患者との長い会話は交わさず,できるだけ接触しないで行う」という,感染症診療の基本姿勢とは真逆のことが要求される事態となった.
人間が罹患する疾患は新型コロナウイルス感染症だけではないはずだが,新型コロナウイルスのPCRの結果のみが重要視され,「PCRが陰性であることは確認済」等々,その後の思考停止の言い訳・免罪符のように使われる場面もしばしば見受けられる.結果として不必要な抗菌薬の処方や広域スペクトラム抗菌薬の処方が増加すること,薬剤耐性菌が増加することなどが懸念されている.これはある意味新型コロナウイルス感染症にわれわれが翻弄されている結果とも言える.
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