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心電図学習に目覚め,確実に判読できるようになりたいと志す者は多い.しかし,その多くは挫折し,心電図が嫌いになり去っていく.そのような迷える子羊に希望を与えてくれる素晴らしい書籍が登場した.その名も『熱血講義! 心電図—匠が教える実践的判読法』である.心電図の初学者を対象とした書籍は多い.本書は従来のどれとも明らかに異なる.一言で言えば「熱い!」のである.これでもかと,微に入り細に入りわかりやすく解説する著者の杉山裕章氏の情熱がダイレクトに伝わってくる.退屈することなくページがどんどん進んでいく.ウーン,素晴らしい!
書名には「熱血講義!」「匠が教える」といった魅力的なキャッチコピーが躍っている.『人は見た目が9割』などキャッチーなタイトルの書籍も存在する.まさに「書名は見た目が9割」である.本書のタイトルは内容の充実度に見合うもので,決して過剰な表現ではない.「匠」とは,優れた技術をもった職人を指す言葉である.著者の杉山氏は,まさに心電図判読の「匠」に相応しい技を惜しげもなく皆に開示している.説明には,「杉山流かけことば」と命名された記憶しやすい呪文が散りばめられている.正常心電図の洞調律の定義の項での「イチニエフの法則」などが好例である.こういった躍動感溢れる「かけことば」によって,心電図学習は難しいという敷居の高さを解消し,読者を楽しい世界に引きつけていく仕掛けである.さらに,執筆協力者の小笹寧子氏による「小笹流 私はこう読む」というコラムが本書の活力を高めている.斬新な切り口のコメントが多く,単調に陥りがちな心電図学習にアクセントを与えている.著者の「杉山流かけことば」が経糸(たて糸)となり,執筆協力者の「小笹流 私はこう読む」が緯糸(よこ糸)となって,心電図学習という強靱な布地を構成している.心電図への苦手意識を抱いていた者も,引き込まれるように心電図の世界に織り込まれていくのである.執筆者と執筆協力者の目的意識と情熱が融合することによって誕生した,まさに「熱い!」一冊が本書である.本書の成功の鍵は,著者が,この素晴らしい協力者を得たことであろう.
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