一冊の本
「外科学序説」
林 四郎
1
1信州大学・外科学
pp.567
発行日 1988年3月10日
Published Date 1988/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221605
- 有料閲覧
- 文献概要
1947年という戦後の混乱の時代に大学を卒業して以来,この40年間に入手した本の中には他人に譲ったり,図書館に寄付したりして,姿を消したものも少なくないし,時代の変遷とともに内容も古くなり,また研究の主題も変って,ページをめくる機会もなくなり,ただ若い頃の思い出に過ぎなくなったものもある.しかし体裁,内容に時代の流れを感じさせるものがあっても,入手した頃の感激が今なお脈々として生き続けている本も少なくなく,Klempererの「内科診断学」や青山徹蔵先生の「小外科総論」などもその実例であるが,冒頭にあげた「外科学序説」もこれまたこの範疇に入る,私にとって記念すべき蔵書である.
1958年に木村高偉氏(名古屋大学出身で勝沼内科から斉藤外科に転じられた)により医歯薬出版から日本語訳が刊行されたもので,その原本は1951年フランス外科学会の長老Rene Lericheによって書かれたもので,本来の題名は「外科の哲学La philosophie de la chirurgie」である.残念ながら現在では新しい本を入手不可能であるが,この名著の一部を拙著「明日の外科―一外科医の回想と期待」(からだの科学選書,日本評論社,1985年)に取りあげさせていただいた.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.