今月の主題 内科医に必要な脳神経外科の知識
脳血管障害
破裂脳動脈瘤の手術—意図的晩期手術
秦 才賢
1
,
佐藤 潔
1
,
石井 昌三
1
Saiken HATA
1
,
Kiyoshi SATOH
1
,
Shozo ISHII
1
1順天堂大学医学部・脳神経外科
pp.2220-2225
発行日 1980年12月10日
Published Date 1980/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216944
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
破裂脳動脈瘤治療の最大の目的は,破裂脳動脈瘤の再出血を防止し,患者を社会復帰せしめることにある.現在のところ脳動脈瘤の再出血の防止には,頭蓋内直達手術によって動脈瘤頸部(neck)をクリップその他で閉塞する以外に確実な方法はない.
破裂脳動脈瘤患者の予後にきわめて重大な関わりを持つ因子として,待期期間中に発生する再出血と脳血管攣縮がある.理論的に考えれば脳動脈瘤破裂による脳損傷や,脳血管攣縮によって惹起される脳浮腫,脳梗塞が一度落ちついた時期,すなわち出血発生後1ないし2週間待期した後に手術を施行すれば,手術時における安全性も確保されるであろうことは容易に理解できる.事実microsurgical techniqueの普及した昨今,内外いずれの報告においても手術成績のみについてみると,晩期手術の成績のほうが優れていることがわかる.これに反し,早期手術を主張する入の論拠は,待期期間中の再出血の予防が確実に行いえないということ,さらに出血発作後速やかに破裂脳動脈瘤を直達手術によって処理し,さらに脳血管攣縮誘発物質が含まれていると思われる血性髄液や血腫を洗浄あるいは排除することにより,脳血管攣縮を予防ないし軽減,脳血管攣縮によって失われる症例を助けうるということである.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.