手術を考えるとき
いわゆる慢性のアッペ
渡辺 晃
1
1国立水戸病院
pp.378-381
発行日 1973年3月10日
Published Date 1973/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204664
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慢性のアッペとは何か5)7)11)
故東北大武藤名誉教授は外科の講義で必ず,慢性虫垂炎というものは学問的にはないのだ,本来急性炎症であるべき虫垂炎を,医師たるものが無批判的に慢性虫垂炎と平気で用語を使っているのはけしからんと強調された.
厳格にいうと慢性虫垂炎とは,その定義も明確でなく,人によって見解にも相違が見られる.病理組織学的にはAschoff, Moschcowitzらは始めから慢性の炎症の形でくるといわれている原発性慢性虫垂炎の存在を否定し,急性炎症の治癒過程であるとしている.本邦では2)浜口らも,44例のいわゆる慢性虫垂炎の病理組織学的検索で,原発性慢性虫垂炎はなかったと報告しているのは注目すべきことと思う1).Schenken & Burnsは急性炎症の遺残と原発性慢性炎症の2型に分けているが,組織学的に壁のFibrosisとリンパ球,エオジン好性白血球の浸潤が筋,粘膜下層にあり,粘膜に病変のないChronic focal Appendicitisと結合織により,虫垂内腔が閉塞されているChronic obliterative Appendicitisの2つに分類しているがPlavitz3)4),(1953)は①再発性虫垂炎,②続発性慢性虫垂炎,③原発性慢性虫垂炎に分類しているが,純学問的に見ると筆者は心の中では,Aschoff,武藤らのいう通り,慢性虫垂炎は急性炎症の治癒過程と見るべきものであろうと思う.
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