今月の主題 臨床栄養Update 2011
扉
中村 光男
1
1弘前大学医学部保健学科病因・病態検査学
pp.351
発行日 2011年3月10日
Published Date 2011/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105053
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わが国において戦前,戦後の食事の変遷は日本人の栄養状態や寿命,罹患する疾患に大きく影響を与えている.戦前,終戦直後はエネルギーや栄養素の欠乏症が中心で,いかにそれを改善するかに重点が置かれてきた.しかし,わが国の高度経済成長後は食事の欧米化,ファストフードの浸透によって脂肪の摂取量増加や質の変化がもたらされ,栄養の欠乏症から過剰症によって引き起こされる疾患が増加した.また,高齢社会となり高齢者の健康的な生活維持のため,高齢者向けの栄養管理も必要な時代になっている.さらには,高カロリー輸液法(total parenteral nutrition:TPN)や経腸栄養法(enteral nutrition:EN)の発達によって経口摂取不能患者の長期栄養管理が容易になっていること,一般の人々がサプリメントを容易に摂取することができるようになっていることなどから,特定の栄養素の欠乏症や過剰症のリスクを念頭に置いた診療を行う必要性がある.
近年,わが国でもnutrition support team(NST)の活動が盛んに行われるようになっているものの,日常診療で常に栄養状態を把握し,病態に応じた栄養管理,治療が適切に行われているとは言い難い.まだまだ医師の臨床栄養学に対する認識は低いと思われる.
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