保健婦活動—こころに残るこの1例
当事者ぬきの支援計画の空回りで学んだこと
中島 歌与子
1
1佐賀県佐賀保健所
pp.52
発行日 1991年1月15日
Published Date 1991/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900263
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現在Aさんは69歳.家族は夫と子供が4人いるが,子供はそれぞれ独立.子供と父親との関係は良くないが,夫婦の仲は良い.昭和43年,Aさんは幻聴や妄想等の症状を呈し,精神分裂病の診断を受ける.本人に病識が全くないため,病院を退院すると拒薬・受診拒否となり,病状悪化で入退院を繰り返している.63年,心不全で内科に入院.命の保証はできないといわれる.
前任者からAさんを引き継いだのは,Aさんの夫が1カ月前に軽い脳梗塞で入院(Aさんと同じ病院の内科)し,近くに住む次女がAさんの面倒をみている頃であった.ある日次女から次のような内容の電話があった.「父は現在入院中であるが,父が退院してきても母と一緒に面倒をみることはできない.これまで父には何一つしてもらっていないし,苦労ばかりさせられた.どこか2人一緒に入院できるところを紹介して欲しいと市役所の福祉事務所に相談に行ったが,3年は待たなければならないと言われた.2人一緒に入院させられないなら父だけでも入院させたい.どうしても父の面倒はみたくない.何とか助けてください」泣きつくように頼む次女は精神的にも不安定になっており,一方的に話された.
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