発言あり
五月病
pp.269-271
発行日 1983年5月15日
Published Date 1983/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206688
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自我の芽生えと心身のアンバランス
五月病,久しく忘れていた言葉である.一時期,マスコミを賑わしていたことを記憶しているが,昨今は余りお目にかからないような気がする.五月病なる言葉は熾烈な受験戦争を経て狭き門をみごと突破,入学式の感激もうすれる五月,ゴールデンウィークの連休明けあたりから,勉強への興味も意欲も失って,すっかり無気力になってしまった大学生の状態をいったもので,症状は"第三教室"即ち,マージャン教室などのプレイゲームにうつつを抜かす.入試一本槍の教育制度と,つめこみ教育,テストの連続,予備校に代表されるマスプロ教育等々の影響が大きく,その根は深いようである.しかし昨今は,大学生の五月病は昔の問題として,中学生の校内暴力,高校生の殺人事件,その他もろもろの非行問題が社会面を賑わし顕在化している.五月病とその症状の表れ方は異質のように見えてその実,根は1つのような気がする.
人生には三度の危期があるという.まず第一反抗期といわれる幼児期,この時期の育ち方が一生を左右するともいわれている.第二は,疾風怒濤の時代,といわれる自我の芽生えと,心身のアンバランスが自己自身を脅かす思春期,そして第三は初老期.この第二の時期が少し前の時代では,五月病として出現し,昨今では急激な社会の変化と環境に影響された少年少女の早熟が,中高校生の非行へと暴走させているのではなかろうか.
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