特集 農村の保健
農薬中毒問題にどう対処するか
上田 喜一
1
1東京歯科大学
pp.213-216
発行日 1965年4月15日
Published Date 1965/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203028
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統計からみた農薬中毒重症な農薬中毒は,10年以前と比較すれば確かに減ってきた。代表的な有機燐殺虫剤パラチオン(フォリドール)を例にとってみると,第1表のような経過をとっている。ことに昭和37年以後は一段と目だって,38年は一般中毒数および散布作業に原因する死亡は,それぞれ1/2近くまで下り,自殺さえもへってきた。この原因は後に述べるように,低毒性の農薬が普及し,パラチオンの使用量,したがって使用機会が減少したためと考えられる。たいへん喜こばしい傾向であろ。昨年(39年)の統計はまだ集まっていないが,同様の数字が示されることと期待している。
昭和38年はこのように中毒の少い年であったが,パラチオン以外にどのような中毒があったかを示すのが第2表である。中毒数では有機燐EPNが第2位だが,イネのメイチュウに対し,大量に使われている現状では当然であろう。しかし散布による死亡が0なのは,この薬の経皮毒性が低いことを示している。自殺の第2位へは有機塩素剤エンドリン(毒物)が躍進し,かって騒がれた有機燐テップ自殺は29と激減した。これは数年前テップが犯罪に使われた事件があり,生産量を控えめに抑えているからである。
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