特集 地区組織活動・1
地区衛生組織活動の沿革と動向
橋本 正己
1
1国立公衆衛生院・衛生行政学部
pp.573-580
発行日 1958年11月15日
Published Date 1958/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202040
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まえがき
ちかごろ公衆衛生の領域で地区組織活動について議論される機会が非常に多くなつた。地方の公衆衛生に関する学会や講習会はもとより,中央の学会や大会でも,研究発表,シンポジウム,特別講演などいろいろな形でこの問題がとり上げられ恰もわが国の公衆衛生は地区組織活動のブームを現出したかの感が深い。このような現象は,戦前には見られなかつたことであり,公衆衛生が「健康のための地域社会の組織的な努力」であつてみれば,地区組織活動こそはその中心的課題でありこの問題が関係者の関心事となり,真剣な討議の対象となつてきたということは,実はわが国の公衆衛生が,漸く新しいれい明を迎えようとしているとも考えられるのである。
イギリスやアメリカについてみると,18世紀の末から19世紀にかけての多くの熱烈なボランテイア達の組織活動が,地方衛生委員会から中央の衛生行政組織へと発展し,今日の公衆衛生の輝かしい成果を収めている。これに対して,わが国の公衆衛生はこれとは逆に,出発の当初からもつぱら中央集権的な行政に支えられて来たことを考えると,最近における地区組織活動の抬頭は,ともすれば黄昏論の唱えられるわが国の公衆衛生の将来に明るい希望を抱かせるものといわなければならない。
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