連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・3
ポリオ根絶に対する取り組み(1)
尾身 茂
1
1WHO西太平洋地域事務局
pp.412-413
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100406
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前回はWHOへの赴任が決まった話をしたが,今回はその後の話である.
WHO西太平洋地域事務局(以下WPRO)行きが決まった直後,厚生省(当時)の医系人事を担当していた谷修一厚生科学課長から呼ばれて,次のことを聞かれた.「WPROには2つのポストがある.1つは課長級でWHO西太平洋地域事務局長(RD)の秘書的役割をするポスト,もう1つは課長補佐級で,ポリオ根絶を担当するポスト.選択しなさい」と.当然その場では判断が難しいので,「少し考えさせて下さい」と言うと,「今すぐに」との指示.課長級のほうは確かに偉そうで魅力はあったが,ポリオ根絶のほうがやりがいがありそうだと勝手に思い込み,「ポリオをやらせて下さい!」と答え,その場で私のポリオ担当が決定されたのである.
1990年9月,フィリピン・マニラにあるWPROに着任後まもなく,同僚2人とともに,当時のRD(地域事務局長),Dr.Hanの執務室に呼ばれた.雲の上の人に初めて呼ばれたことで,ガチガチに緊張して執務室に向かうと,Dr.Hanから「西太平洋地域におけるポリオ根絶を2000年までに達成するため,すべてに優先して取り組みなさい.尾身は1991年4月までに専門家会議を東京で開催しなさい」との厳命を受けた[後から判明したのだが,Dr.HanはRDに就任後,1期目(1期は5年)の途中であり,ポリオ根絶に向けた取り組みは2期目の再選に向け,最も優先順位の高い課題の一つだったのである].
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