特集 すべての女性は傷ついている トラウマ・リカバリーと妊娠・出産
扉
pp.359
発行日 2025年10月25日
Published Date 2025/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134781680790050359
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「なんとなく気になる」「マイナートラブルが多い」「関係をつくりにくい」「妊娠や育児に前向きではない」……そんな妊産婦さんは,もしかしたら,トラウマをもっているのかもしれません。
性暴力や子ども虐待,パートナーによる暴力など,「ジェンダーに基づく暴力」を経験したことのある女性は少なくありません。統計的には,2人に1人が暴力を経験しているとも言われます。そのような経験はトラウマとなってその人の人生に大きな影響を与えることがありますが,時間をかけて回復(リカバリー)できるということが,近年の研究で分かってきています。
トラウマをもつ女性にとって,妊娠・出産は,性器への接触を含む医療ケアを受け,自身の養育体験を想起する機会であることから,トラウマの影響を受けやすい,危機的な時期です。DVなどの暴力を受けやすい時期でもあり,新たなトラウマをもつことにもなりかねません。しかし同時に,支援者との接触が増えることから,リカバリーへの道を歩み出す好機ともなりえます。
トラウマについて支援者に伝える女性は稀かもしれません。本人が自覚していないこともありえます。しかしすべての女性に対して「傷つき・トラウマをもっているかもしれない」という前提でケアを行うことで,妊娠・出産がトラウマの再現ではなく,癒しや回復につながる可能性が生まれます。といっても,実は特別なケアはそれほど多くありません。目の前の女性に向き合い,尊重するケアが基本となります。日頃のケアを見直す一つの考え方として,トラウマについて,リカバリーについて,学んでみませんか。

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