特集 痛み-脳-こころ Revisited
〈column〉
他人の痛みは蜜の味:社会的な痛み
髙橋 英彦
1
1東京科学大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学
キーワード:
妬み
,
envy
,
シャーデンフロイデ
,
Schadenfreude
,
社会的な痛み
,
social pain
Keyword:
妬み
,
envy
,
シャーデンフロイデ
,
Schadenfreude
,
社会的な痛み
,
social pain
pp.1148-1149
発行日 2025年8月15日
Published Date 2025/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048812810670081148
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共感や同情の脳科学研究
他人に不幸が起きたり,痛がったりしていると通常,私たちは共感や同情を示したり,心配したりする。これは医療者に限らず,根源的で,重要な心理的反応であろう。そのため,共感や同情の脳科学研究は,精力的に行われてきた。そのなかでも,重要な研究としては次のものがある。2004年に英国の研究グループは,カップルの片方が,カップルの他方に痛み刺激を与えている様子を観察している時の脳活動をfMRIで計測した1)。その結果,自身の痛みを感じる時と他人の痛みに共感する時には前部帯状回と島皮質がオーバーラップして活動することを示した。物質的な痛みと社会(心理)的痛みには,脳内処理過程において共通する面が多いことを示した研究であり,その後の共感研究や,社会(心理)的痛み研究に大きな影響を与えた。なお,前部帯状回と島皮質を中心とする脳ネットワークは,本特集でもペインマトリックスとして詳述されている2)。
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