- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
コロナ禍におけるインターネット情報
コロナ禍において、日々更新される感染者数や死者数に関する公式統計、政策決定を報じる国際機関や政府機関、世界各地の社会的状況を報じるマスメディア、研究成果を報告するプレプリント、ほぼオープンアクセスで公開された論文に至るまで、インターネット情報は極めて重要な役割を果たした。
しかしその一方、2つの大きな問題が、信頼できる情報源としてのインターネットの問題点を浮かび上がらせたことも事実である。1つはインフォデミックで、もちろん旧来のマスメディアや口コミでも起こっていたが、SNSの普及により、誰でも容易に情報の発信や輻輳が可能になったため、恐ろしい速度で誤情報が拡散するようになった。しかも互いに似た政治経済的スタンスを持つ人たちが互いのSNSアカウントをフォローし、間違った情報でも仲間が同意してくれることによって強固な信念となってしまうエコーチェンバーや、プッシュ型のSNSメディアが受け手の好ましく思う情報だけを選択的に届けることで、一面的な情報だけが仲間内にはまん延し、不都合な情報は入ってこないフィルターバブルといった特性によって、より先鋭化し尾ひれが付いていくことが多かった。2020年7月17日に発行されたLancet Infectious Diseases誌のEditorial1)(編集委員会による巻頭言)は、トランプ大統領やボルソナロ大統領のように雑で利己的で意図的に誤解をもたらすような誤った情報を流す政治家と、それを訂正せずセンセーショナルな速報に走るマスメディアによって、公共への信頼が失われ無援護感がもたらされ、今度はそのことが有害な誤情報が広がるための完璧な条件となり、さらに誤情報が流され続けるという悪循環がインフォデミックを起こす、とまで述べていた。

Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.