特集 化かしが得意なカメレオンな疾患を捕まえろ! Season 2│非典型像に対する診断の守備力を鍛えよう!
カメレオンな疾患たち
❸ビタミンB12欠乏症
薄 竜太郎
1
,
會田 哲朗
1
1福島県立医科大学医学部 総合内科・総合診療学講座
キーワード:
ビタミンB12欠乏症
,
高ホモシステイン血症
,
精神症状
,
神経疾患
,
血栓性微小血管症
,
副腎皮質機能低下症
Keyword:
ビタミンB12欠乏症
,
高ホモシステイン血症
,
精神症状
,
神経疾患
,
血栓性微小血管症
,
副腎皮質機能低下症
pp.1089-1093
発行日 2026年10月15日
Published Date 2026/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510360101089
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ビタミンB12欠乏症のよくある臨床像
ビタミンB12(コバラミン)は赤血球形成、神経機能維持、DNA合成に関与する不可欠な補酵素であり、その欠乏は造血器・中枢神経・口腔粘膜など、特に細胞分裂が活発な組織に障害をもたらす。典型例では大球性貧血、亜急性連合性脊髄変性症、舌炎といった症候で知られるが、実際にはこれらがすべて揃う症例は多くない。大球性貧血は有名な所見であるが、鉄欠乏や慢性炎症などの合併により平均赤血球容積(MCV)が正常化し、見落とされることもある。また、ビタミンB12は胃で内因子と結合し、回腸末端の受容体を介して吸収される。このため、胃全摘・広範胃切除や回腸末端切除は、明確なリスク因子である。菜食中心の食事、萎縮性胃炎、薬剤(プロトンポンプ阻害薬、メトホルミンなど)、Crohn病やセリアック病といった吸収不良をきたしうる消化器疾患もリスク因子として挙げられる。これらのリスク因子の該当がない場合には、自己免疫性胃炎を念頭に置き、抗胃壁細胞抗体および必要に応じて抗内因子抗体、上部消化管内視鏡所見を含めた評価を行うべきである。こうした背景を有する患者では、非特異的な倦怠感や末梢神経障害、口内炎や舌炎などの背後に、ビタミンB12欠乏症が潜んでいる可能性を常に意識したい。
米国人を対象とした疫学調査(2007〜2018年、19歳以上9,297例)においてビタミンB12欠乏症の有病割合は3.6%で、血清ビタミンB12値が境界域以下(<300pg/mL)である割合は全年齢層で10%超とされている2)。先進国においても潜在的ハイリスク集団が一定数存在することが示唆される。

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