#総合診療
#書評:—事例で学ぶ—医療機関で起きる法的トラブルへの対処法
松村 真司
1
1松村医院
pp.1079
発行日 2025年9月15日
Published Date 2025/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350091079
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2000年に亡き父が開設した診療所を継承し、四半世紀が経過した。世間の人が抱く、気心の知れた地域の人々と、ゆったりとした診療が続く穏やかな日々……などという地域医療のイメージは、とうの昔に幻想となっている。実際には、次々と持ち込まれる多種多様な問題に対応するうちに、はっと気が付くと時が流れた、というのが実感である。世の中には本当にいろいろな人がいる。人がいるところに問題が発生する。そしてその問題は、時にトラブルへと発展する。いや、むしろ小さな診療所だからこそ、トラブルの当事者の一方になりやすい。もちろん、それらを何とか対処できてきたからこそ、今があるのであるが、やはりその間にはさまざまな方面の助けを借りたこともある。診療面での相談であれば助けを借りる先はいくつもあるが、法律面での相談というとなかなかそういうわけにもいかない。そして当然のことであるが、時とともに社会状況は変化を続ける。好むと好まざるとにかかわらず、以前は遭遇しなかったような問題が次々と発生する。
本書は雑誌『病院』の連載「医療機関で起きる法的トラブルへの対処法」を書籍としてまとめられたものである。取り上げられている法的トラブルは、患者対応や労務関係のような「古典的」トラブルにとどまらず、昨今問題となっているインターネット上の誹謗中傷、サイバー攻撃などの情報管理の問題、人材紹介会社とのトラブルなど多岐に及んでいる。トランスジェンダーの職員への合理的配慮や、昨今話題の働き方改革に伴う問題など、現代的なトピックも多数取り上げられている。

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