書評
—事例で学ぶ—医療機関で起きる法的トラブルへの対処法
松村 真司
1
1松村医院
pp.89
発行日 2025年1月25日
Published Date 2025/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.055704330600010089
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2000年に亡き父が開設した診療所を継承し,四半世紀が経過した.世間の人が抱く,気心の知れた地域の人々と,ゆったりとした診療が続く穏やかな日々……などという地域医療のイメージは,とうの昔に幻想となっている.実際には,次々と持ち込まれる多種多様な問題に対応するうちに,はっと気が付くと時が流れた,というのが実感である.世の中には本当にいろいろな人がいる.人がいるところに問題が発生する.そしてその問題は,時にトラブルへと発展する.いや,むしろ小さな診療所だからこそ,トラブルの当事者の一方になりやすい.もちろん,それらを何とか対処できてきたからこそ,今があるのであるが,やはりその間にはさまざまな方面の助けを借りたこともある.診療面での相談であれば助けを借りる先はいくつもあるが,法律面での相談というとなかなかそういうわけにもいかない.そして当然のことであるが,時とともに社会状況は変化を続ける.好むと好まざるとにかかわらず,以前は遭遇しなかったような問題が次々と発生する.
本書は雑誌『病院』の連載「医療機関で起きる法的トラブルへの対処法」を書籍としてまとめられたものである.取り上げられている法的トラブルは,患者対応や労務関係のような「古典的」トラブルにとどまらず,昨今問題となっているインターネット上の誹謗中傷,サイバー攻撃などの情報管理の問題,人材紹介会社とのトラブルなど多岐に及んでいる.トランスジェンダーの職員への合理的配慮や,昨今話題の働き方改革に伴う問題など,現代的なトピックも多数取り上げられている.
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