特集 看護関係文献集録=1970〜1972
文献集録を手がけて
森 日出男
1
1名古屋保健衛生大学
pp.81-82
発行日 1974年4月15日
Published Date 1974/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200369
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この集録を手がけてから,もう10年あまりになる。その間,25年いた国立京都病院の眼科医をやめ,管理職として自治体病院開設にあたり,そして今は思いもかけず大学教授という衣を着てしまった。仮縫いもしなかったし,作業服できびしい生活をしてきた私には,とまどいとともに,どうもしっくりしないものがある。3年前には日本病院管理学会・厚生省から諸外国の医療事情を直接見聞する機会を与えられ,自分で支えきれないほど多くのものを得た。それに最近短期間ながら,浪人生活の甘ずっぱさや塩っぽさを味わい,ちがった面で人間を知ったり,考える時間ももち得た。
どうも人生の後年に至って,私と別のところで歯車が動き出したような気がする。別に悪業の覚えもないし,とりたてて刺激を好む性でもないのに――。まあいい,年をとっても何もかも新しく,そして知るところ,得ることの多さが,実感を伴って私を充たしてくれる。医学からそれて歩いてきて,はじめて"医療"が"社会"が見えてきたように思う。新鮮さは年の経過を感じさせず,有限の生命すら意識にものぼらない。まだまだ時間を感じない人生の中で,私は生きることの実感とそのしるしを知ろう。しかし,まてよ,こんなことを書くのも年をとったせいなんだな。恥ずかしい。
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