やさしい心電図のみかた・11
薬剤と心電図
高階 經和
1,2
1神戸大学淀川キリスト教病院
2高階クリニック
pp.1181-1184
発行日 1976年11月1日
Published Date 1976/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918020
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1.すべての薬剤が心電図に影響を与えるでしょうか
この質問はいかがでしょうか.答えは‘必ずしもすべての薬剤が心電図に影響を及ぼさない’ですね.第1回から10回までお読みになっておられますから,もう一度心臓の解剖や生理について説明する必要はないと思いますが,一般的に言って,心臓は心拍数が増えると,全身に送り出される1分間の送血量が増えます.つまり1回の拍出量が80mlの場合,正常の心拍数が60であるとすれば,安静時の心送血量は80×60=4800(ml)となります(シリーズNo.2‘臨床的意義と正常心電図’の項参照).
ところが甲状腺機能亢進症にみられる洞頻拍では心拍数は100以上となり,80×100=8000(ml)となるために送血量(分時量)の差は,3200(ml)になります.このような状態を起こすことのできる薬剤には,甲状腺製剤としてチロキシンがあり,甲状腺機能亢進の際と同じような結果を生むことになります.また,そのほかの薬剤でもいろいろな心臓循環系薬剤があり,その結果心電図に変化が現れてくるわけです.
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