連載
新薬のはなし【5】
増山 善明
1
1東大田坂内科昭和医大
pp.36
発行日 1962年1月15日
Published Date 1962/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911545
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今回は新らしい脱コレステロール剤と,最近比較的広く用いられるようになつたA. T. P製剤とをとりあげてみましよう。
トリパラノール Triparanol,(M ER-29,デリトール):動脈硬化症が血清コレステロール値の高い患者に多いことはよく知られており,従つて血中コレステロール値の低下をはじめ,コレステロールの血管壁への沈着防止,合成抑制等の作用をもつ薬剤の研究が進められて,これまでにもリノール酸等の不飽和脂肪酸をはじめいくつかの脱コレステロール剤が用いられてきました。トリパラノールはトリフェニール・エチレン剤で,これまでの脱コレステロール剤とちがつて,コレステロールが出来上る最後の段階であるデスモステロール(Desmosterol)からコレステロールが出来上る過程でコレステロールの合成を阻害するといわれています。これによつて血清および組織中のコレステロールを低下させる作用をもつています。従つて,動脈硬化症,冠動脈疾患,脳血管障害等で血清コレステロール値の高いものに用いられます。250mgのカプセルが通常用いられ,通常1日250mg1回朝食前に服用します。副作用は時に軽度の食慾不振を訴えるものがあります。
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